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「普段着の和服」と「普段着が和服」

最近和服関連の話題でよく見聞きするようになった「普段着」という言葉、これには2つの意味合いがある。今後とも和服を着続けようと思うのであれば、ほんの少しでいいから考えてみてほしい。

カジュアルとノーマル

「普段着」の2つの意味合い、ひとつは「普段着「の」和服」。洋服にもあるフォーマル(礼装)に対するカジュアル(普段着)、衣服の格付け的意味。

普段着が云々という話題では、おそらくこの意味合いで使われていることが多いと思う。フォーマルはなにかと決まりごとがあるけどカジュアルならほぼ自由、着る人の好みで和服のお洒落を楽しみましょう、ってな感じ。

これに関してはオレはどうこう言うつもりはない。和服に限らずお洒落云々は個人の判断で好きにすればいいこと、楽しみたい人は存分に楽しめばいいかなと。

もうひとつは「普段着「が」和服」。フォーマルカジュアルに倣って横文字で説明するなら、あなたにとって和服(を着ること)は特別なこと(スペシャル)なのか、それとも普通のこと(ノーマル)なのか、といった感じ。

えっ?イマイチ言ってる意味がわからないって?それなら以下の文章をどうぞ。

洋服を着る理由ってなに?

ある日、あなたが和服を着て飲み屋に行ったとする。すると、隣に座っている洋服を着たお客さんがこう聞いてきた。

「あのー、失礼ですけど、なぜ和服(着物)を着ているのですか?」

そのときあなたはなんと答える?

「いやあ、和服(を着ること)が好きですから」

例えば職場の制服としてなど、和服を着るなんらかの理由がある人はともかく、自分で好き好んで和服を着ている人であれば、だいたいの人がこんな感じで答えるだろうよ。当たり前といえば当たり前の反応だわな。

でもここでちょっと考えてほしい。もしあなたが隣に座っているお客さんに、

「なぜ洋服を着ているのですか?」

と聞いたとき、

「いやあ、洋服(を着ること)が好きですから」

こう答える人が果たしてどれだけいるだろうか?洋服を着ることがごく当たり前の現在、理由を聞かれても答えようがないというか、逆に「えっ、洋服を着るのに理由がいるの?」と聞き返されてもおかしくないはず。

これでなんとなくわかった?

これだけ洋服が氾濫しているご時世に、洋服ではなくあえて和服を着るってことは、一番最初はきっかけというかなにがしかの理由があったと思う。理由の中身はなんでもいい、それ自体は大した問題じゃないから。

でも、ある程度着続けたことによって、和服が自分にとっての洋服=着ていることが当たり前になったのであれば、着ている理由をいちいち説明する必要はあるかな?

だって、和服を着ていることが自分にとって「普通(ノーマル)」なんだから。

着る機会?それって着る「理由」では?

もうひとつ「和服を着たいけど着る機会がない」というのをたまに見聞きする。オレからすれば、着る機会も何も、着たいのならいつでも着ればいいじゃん、と思うんだけど、

>高級品だし着るのも難しいし、気軽においそれとは着られない。

>和服を着てもいいような場所や状況がない。

といった意味なんだろうなと。前者の場合は「和服=紋付や振袖」といった認識なので、そこが修正されればまあ問題ないかと。しかし後者の場合は、場所や状況といった機会を言ってるものの、実際は着る「理由」がほしいんじゃないかなと。

「べ、別に、好きで和服を着てるわけじゃないかなら!せっかく京都に来たんだから、京都なら和服もいいかなと思っただけだからな!こ、この時のために買っただけで、日頃から着てみたいんじゃないからな!」

なんか、そこらのアニメでありそうな展開だわな(笑)

自分の恰好が周囲と違うのはわかってても、それに対して「好きだから」といった個人の感情ではなく、自分自身も含めた誰もが納得する論理的?な理由がほしいわけ。京都だから、浅草だから、イベントだから、習い事だから、花火大会だから、ハロウィンだから……正月だから。

着始めたばかりの頃なら、気恥ずかしいのもあって仕方ないだろうけど、ある程度着るようになって、やっぱ自分は和服がいいなあと思うんだったら、もう機会を待つ=理由探しはしなくていいんじゃないの?

自分の「服」を着るのに理由なんかいらんでしょ。

いざというときの返答例

とはいえ、和服姿が「珍種」である今の状況では、初めてあなたの和服姿を見た人は結構な確率で「なぜ?」と聞いてくると思う。じゃあそのときなんと答えればいいか?

「最初は興味があって着始めたのですが、今では和服が私にとって服(洋服)と同じ感覚ですから、(あなたが洋服を着ているのと同じで)理由は特にないです」

といったことを返せればいいんだけど、これはこれで長ったらしい厚かましいので

「普段が和服なんで特に理由はないです」

ぐらいでいいか。実際オレは飲み屋とかで今でも聞かれることあるけど、めんどくさいから簡単に「いつもこれ(和服)なんで」で終わらせてるかな。もっとひどい?と、店の従業員や他のお客さんがオレより先に「この人はこの恰好が普通だから」と言ってくれたりすることもある。

……と、ここまでは以前の「返答例」だったんだけど、新しい返答例?が見つかった(平成29年10月)ので追加。

「私服がコレ(和服)なんで」

「私服」という単語が、職業や習い事などいわゆる誰もが思いつく和服を着ている理由をすべて否定しつつ、服の趣味として和服が気に入ってるから着ていると明示しつつ、それらをさらっと簡潔かつ的確に言い表している言葉……とオレは思う。

それで通じるのかよ!と思うかもしれないけど、意外や意外、逆に通じない人こそほとんどいない。そして当然ながら、二度と同じ質問をされることはない。

少しずつ「ノーマル」を意識しておくれ。

今回の文章はかなり極論なので、和服、特に着物を着始めた(着てみたい)人を対象としているウチのサイトとしては、ここまで言うのはちょっとキツイかなあとは思う。

で も「オレも普段着として着物を着てみたい!」と思っているのであれば、普段着(カジュアル)の意味だけでなく、少しずつでも普通(ノーマル)を意識 してみてほしい。そうすれば、このサイトで何度も言っている「和服は洋服と同じ衣服」の意味が、頭ではなく体でなんとなくわかってくるんじゃないかなと。

ちなみに以上の理由から、オレは自分以外に和服を着ている人がいても、しげしげと観察するようなことは基本的にしない。逆に観察されたらビビるので、ガン見するぐらいなら声かけておくれ(笑)

(C) 2007,2019 バカガエル.