その和服の着方はルール?マナー?それとも……
和服(着物)の着方や使い方には、いろんな決まり事があるようによく言われる。でもそれって、どこまでが本当なのかな……?というわけで、和服の着方に関して段階的に考えてみようと思う。
なんでもいいので、これはどうなんだろ?といったことを想定してから読み進めてみてもいいかもよ。
1:憲法や法律の条文
まず最初に考えなければいけないのは、日本の憲法や法律などの「法」。結論から言うと、日本の法的には和服の着方を指定するものはいっさいない。海外は知らん。
頭に袴をかぶろうが長着(着モノの正式名称)や羽織を裏返しに着ようが、憲法違反でも犯罪でもない。いつ誰がどこでどんな和服を着ようが、それが原因で罰せられることは当然ながらない。
唯一、天皇陛下や皇族へ拝謁する場合の服装は、細かく決まっているっぽい話を聞いたような聞かなかったような。まあ、何かの間違い?で園遊会や勲章授与式とかに行くことになった人は、それこそ宮内庁にでも問い合わせてくださいな(これ重要)。
2:衣服として当たり前の着用方法
法の次は、当たり前の使用(着用)方法をするかどうかかな。
例えば「襦袢→長着→羽織、と上へ順番に着ていく」「帯は腰に巻く」などなど、装着する場所や使い方か決まっているものは、そのとおりに使ってやる、というだけ。
チンドン屋のように奇妙奇抜な恰好で目立ちたい人はともかく、ごく普通に着てさえいれば、これに引っかかることもまずないだろうよ。
法に関してはパスしているので、頭に袴をかぶりたい人はかぶっていても罰せられることはない。ただし、普通に考えると変な使い方なので「えっ、なんで頭に袴なの?ちょっ、ありえないんですけどwww」とは言われるってわけ。
3:会社の社則やドレスコード、ローカルルール
続いては、会社の制服規定や場におけるドレスコード、あるいは各地域の慣習のようなローカルルール。
ドレスコードだのルールだの、なんだかややこしそうに思えるかもだけど、状況や場所によっては着るモノが指定されているのでそれに従う、ってだけのこと。難しくも何ともないはずだ。
例えば、勤め先の会社で制服の規定があるのなら、いくら和服を着たくても制服を着用するのが当たり前。ある地域の結婚式に「出席者は全員浴衣着用」といった慣習や風習があったなら、いくら礼服で出席したくても浴衣を着なければならない、とか。
麻雀で例えるなら「喰いタンなし」でやってる場で「そのチーピンでロン!喰いタンのみ!」とか宣言されても、知らんがなチョンボやがな他所でやってくれって話(笑)
これらは場のルールとして明確に定められている(告知されている)ことなので、守れないならご退場願いますってこと。言うなれば「郷に入っては郷に従え」かな。これも、ほとんどの人はクリアすると思う。
規定なし=和服OK、ではない
たまーに、会社(学校)に制服の規定がないので和服を着て行きたい、といった意見がある。
規定がないんだから和服OKだよね、と解釈していい……わけじゃない。ほとんどの場合は洋服前提での規定なしであり、和服は想定外というか前提以前の服装なんだよ。
なので、どうしても和服を着ていきたいなら、それを実行する前に上司(先生)や会社(学校)に相談して、和服を着用する許可をもらう必要がある。許可が出れば堂々と着ていけばいいし、不許可なら潔く諦めるしかない。
会社や学校は自分「だけ」の場ではない。和服を着たい気持ちはわかるけど、そこはきっちり分別をつけておくれ。
他の状況でも、和服でもいいのだろうか、こんな恰好でもいいのだろうか、などといったことがあれば、自分で勝手に解釈や判断をせず、主催者や会場に問い合わせるようにしてほしい。それが一番間違いないから。
いつか和服が復権したのなら、そういったことはなくなるかもしれない。でもそれには、まだまだ時間がかかるだろうね、残念ながら。
4:冠婚葬祭などマナーや礼儀
その下?にあるのが、いわゆるマナーや礼儀というやつ。一見するとドレスコードに含まれそうだけど、ドレスコードを「明確なルール」とするなら、マナーや礼儀は「暗黙のルール」といったところかな。
例えば、お葬式にハデハデの和服を着て参列しても、別に犯罪でもなければ着用方法がおかしいわけでもなく、ハデハデ衣服はお断り!という注意書きもまずない(もちろんあればドレスコードとしてダメ)。
でも、お葬式に参列する服装としては「好ましくない」わけで。マナーや礼儀の観点から、お葬式にはお葬式に合う服装=喪に服していることを表す服装が必要になる。逆に、結婚式に喪服を着て行く人もいないでしょ?
言い換えれば、状況を考えてその場にふさわしい服装にするTPOの一種かな。とはいえ特殊な状況だから、その時だけ気をつけておけばいいと思う。
ただし、特に冠婚葬祭に関することには、やたら細かいことを言うなどいわゆる「うるさがた」がたまにいるので、そこは注意しておくように。
5:あとは自分の主観やセンス
いくつか段階的に解説してきたけどこれが最後。残るは……各自が勝手に判断すること(笑)冒頭で想定したかなりのことが、途中で引っかかることなくここまできたんじゃない?
そう、世の中で和服のルールやマナーっぽく言われているものは、個人の主観やセンスやイメージをもっともらしく言っているだけ、ってのが意外に多いんだよ。簡単に言えば、他人に対してなんの拘束力もない俺様ルールなわけ。
えっつ?!と思うかもしれないけど「そういった着方使い方をしなければいけない」なら、それ相応の「理由」があるはず。どこかの偉 い人が言ってたとか、どこかの本に書いてあったとか、そういった第三者の意見ではなく自分で説明できるかどうかってこと。
例 えば、和服を着る時には足袋である必要はなく、裸足でもいいし靴下でもいい。えっ、和服には足袋でしょ、と思うかもしれないけど「足袋のほうが それっぽいから」程度の理由しかないはず。他に何か実用的な理由ってある?
今まで解説してきた項目に引っかからないかぎり、足袋のほうがいいって人は足袋を使えばいいし、靴下のほうがいいやって人は靴下でいい。それを決めるのはその人の主観やセンスなんだよ。
着るのは他の誰でもない「あなた」なんだから、着たいように着ればいいってわけ。
単純に「服装の常識」に従うだけでOK
段階的に書いたものの、実はこれ、洋服では誰もが(無意識のうちに)やってることなんだよ。一般的な社会常識で判断しつつ衣服としてごく普通に着ていれば、1〜4までの段階はほぼ勝手にクリアすると思う。
言い換えれば、和服には洋服にない決まり事があるって考え自体が「間違い」なわけ。そういった思い込みを捨てて、服装の一つとして和服を捉え直してごらん。難しく考えていたのがバカらしく思えてくるから。
それぐらい気軽なものだったからこそ、昔は誰でも着ていたんだよ。
ちなみに、こういった「ルール」については、いくつかはサイトのほうでも解説しているので、よろしかったらどうぞ。
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