和服の定説?考察
和服(着物)に関して当たり前のように言われていることでも、よくよく考えるとどこかおかしいこともあるわけで、それらをオレなりに考察してみた。スケスケ着物は涼しい?
夏場にフォーマルな着方をするときに使われる、絽などのスケスケ着物。実際に生地には隙間がたくさんあり、風が通り抜けて夏場でも涼しいそうではあ るんだけど、実はそうでもなくて、むしろ浴衣(綿の単衣の着物)のほうが涼しいぐらいだったりする。
スケスケ長着単独だと肌着下着がかなり透けて見えるので、当然ながらその下に長襦袢なりを着ることになる。浴衣だと浴衣だけでいいのに、スケスケ着 物は長着と襦袢を着るという厚着をすることになるわけ。暑いのに厚着したいかい?
風が通り抜けるってのも「風が吹けば」の話で、風が吹かなきゃ通り抜けるもクソもないし、風が吹けば涼しいのは汗が気化熱で体温を下げるからであっ て、薄着であればなに着てても一緒なわけ。
結局着てる本人は言うほど涼しくないんだけど、ただ、それを見た「周囲の人が」涼しく感じることは考えられる。下が透けて見えるんだから「なんだか 涼しそうなもの着てるね」と。風鈴の音などいわゆる「涼を感じる」ってやつかな。
あくまでオレの推測だけど、スケスケ着物は今でこそフォーマル用に使われたりするけど、元々は着道楽の人が「透けて見えるから他人に涼しそうに思わ せられるんじゃね?」と、お洒落というかネタで着始めたのかも。
お腹の出た人のほうが似合う?
「男性の着物姿はお腹が出てる人(早い話がデブ)のほうが似合う」と言われることがあるけど、結論から言うとぜんぜん根拠はなく、似合う似合わない に体型は全く関係ない。
一番わかりやすい例が日舞や歌舞伎、大衆演劇などの人。あの人らはみな着物がすごく似合ってるけど、お腹が出てる人がどれぐらいいる?むしろ少ない んじゃない?
ファッションセンスなども少しは関係してくるだろうけど、着物が似合う似合わないってのは、その人がどれだけ着物を着慣れているか、自分の体型に 合った着方ができるか、これらが重要なわけ。もちろん、自分サイズの着物ってのも大事。
言い換えれば、どんな体型の人でも着物を着慣れればそれなりに似合うようにはなるし、着慣れてなければ……あとは言わなくてもわかるよな?
ところで、なぜお腹の出ている人のほうが似合うと言われるのかは、テレビドラマや映画などの影響があるのかなあと。
主役準主役とは別に、なんかこうボスとかドンとか組長会長社長とか、善悪関係なく「重役」というか「貫禄がある」役があるでしょ。それを表現するの に貫禄がある→少々年配でお腹が出ててる(有名な)俳優さんが演じて、衣装としてかなりの確率で着物を着てると。そういうのが刷り込まれてできあがった 「勘違い」じゃないかなあ。
紬生地は礼服などに使えない?
もはや高級反物の代名詞的存在の紬生地。有名なのは大島紬かな。でもなぜか「冠婚葬祭などフォーマル用の生地としてはよろしくない」と言われることがあって、理由を聞くと「野良着(カジュアル、普段着)用の生地だから」と返されることが多い。
というのも紬生地は、大昔は製品生 地 を織って余った残り糸を紡いで(つむいで)織った生地、例えるなら残り物で作ったまかない飯のような生地だったんだとか。そりゃ、そんな生地の着物をフォーマルな場に着ていくわけにはいかんわな。
紬生地が大昔のままであれば、ね。
今の紬生地は、残り糸で織ってるのではなく専用の糸を使って丁寧に織られてる、残り物どころか立派な製品生地。だから高級品だし何万何十万円もしているし、もう野良着だのなんだのには該当しないと思うわけ。
でもこれは「オレの考え」であり和服業界の公式見解?ではないので、実際に着る上では、大島紬のように柄が入ってるのはさけて無地のものにするとか、主催者側に確認を取ってその指示に従うようにしておくれ。
フォーマルな場にはなんせ「うるさ方」が出現しやすいから、難癖つけられるぐらいなら洋服のスーツとかで無難に済ましたほうが精神的にいいかも。
着流しって?
最近では「羽織を着ず、長着(+襦袢)しか着ていない状態=着流し」と言われてるけど、正確には「羽織を着ていても袴を穿いていなければ着流し」ら しい。
おそらくだけど、羽織を着ていても袴を穿いていない→礼服にしては適当、ということで聞き流す(適当に聞く)と同じ意味合いで着流す (適当に着る)だったのかも。よって、袴の有無ではなく礼服以外=着流し、が正解かもしれない(それこそ適当)。
まあ今どき「今日は着流しで〜」とかわざわざ言うこともないので、どうしても着流しという言葉を使いたい人は民俗学とかの偉い人にでも聞いておく れ。
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