kimono-Wa-Fuku

トップページ>ブームや流行は流れ行く

和服をブームや流行で終わらせないために

着物ブーム?和服の流行?そんな表面的なことばかりを追いかけ、日常生活の中に根付かせようとしないのであれば、和服は再び過去の遺物として消え去ってしまうよ?

「ネット上では」増えているように見えるだけ

和服を着る人がだんだん増えてきてます!と、さも和服人口が盛り返してきたようなことを言う人がいるけど、オレから言わせれば、そこまでいうほど増えてないと思う。

なぜかというと、すべてはインターネットのなせる技だから。

着る状況や頻度はさておき、もともと和服を着る人は各都道府県に一定数いただろうし、和服関連の品物(生地や履き物など)を作っている製造元や着物屋だって日本全国にあったはず。ただ、その存在を知る「手段」が以前は乏しかったので、「いる(ある)けど見えない」状態だったわけ。

それが今では、ぐーぐる先生から始まりブログやSNS、ツイッターなど、需要側(和服を着る人)も供給側(販売店舗、イベント主催)も、自分らの存在を日本全国(世界中)に発信できるようになり、お互いがお互いを知ることができるようになった。

インターネットが普及したことにより、存在していたけど見えてなかった気づいてなかったものが、誰でも手軽に見つけられるようになっただけなんだよ。言うなれば「あぶりだし」みたいなもんですな。かく言うこのサイト(オレ)も、そのひとつだろうけどね。

それと、オレの自伝にあるように、もしインターネットが普及してなかったら、全国に散らばってる和服を着る人らと出会うことはなかっただろうし、古着の存在に気づくこともなかったかもしれない。言い換えれば、オレがここまで和服を着るようになったのも、インターネットがあったからこそであり、そんな人はオレ以外にもいるはずだろう。

だから、「増えてない」とは言わないけど、もともと存在した一定数の着る人を除けば、そこまで増えてないんじゃないかなと思うわけ。もっと突っ込んだ言い方をすれば、何らかの理由で「着るのをやめる人」もいるわけだしね。

ちゃんと「方針転換」してるの?

そんなこんなで、ネット上では和服の話題や情報が散見されるようになってきたんだけど、それらをざっと見たときに、なんだか変な方向に向かってる……いや、方向性はまったく変わってないんじゃないかなとオレは心配するわけ。

なんて言うのかな、そういった話題や情報に「日常生活」の気配があまり感じられないんだよ。

知ってる人は知ってるように、ほんの少し前の和服ってのは、絹物こそ大正義の高級品志向で「お出かけ時の装い」といった感じの、ちょっとお高くとまったふうで一般人には手が出せないイメージだった。

それが最近では、あまり生地の種類にはこだわらず、誂え古着さらには洋服との組み合わせなどなんでもござれ、もっと気軽に着て「お出かけしようぜ」といった感じになってきてる。

ぱっとみは、ハードルが下がってきたように思えるんだけど、それは着るモノが高級品から普通の品物に変わっただけで、実は両方とも「お出かけ」がメインの場であり、「ファッション(オシャレ)としての和服」という部分は変わってないんじゃないかなと。

和服も衣服である以上、ファッション的な部分はもちろんあってかまわない。

でも、現在の洋服のあり方をふと考えてみると、現在の和服のファッションには、まったく安定感?がないように思えてくるんだよ。

「地盤」は存在していない

世の中には流行やブームというものがある。

洋服の世界、いわゆるファッション業界では、次から次へと新しいデザインや流行が生まれ、それと同じぐらいのスピードで、古いのはどんどん消えていってる。ファッション(流行)は流動的なもので、その言葉どおり、流れ行き移り変わるのが世の常だからな。

だからといって、流行の移り変わりとともに洋服そのものが消え去るわけではない。

なぜなら、デザインや色柄などの表面的な部分がいくら変わっても、洋服そのものは日常生活の衣服として世間一般に定着しているので、流行がどうであろうが「洋服を着る」という「地盤」は変わらないからね。

これが和服の場合はというと、ごくごく一部の人には日常生活の衣服かもしれないけど、世間一般に定着した地盤は存在していないわけ。もし存在しているのであれば、洋服がそうであるように、もっともっと和服を着た人を常日頃から見かけるはずだろうからな。にもかかわらず、ネットに溢れる情報は「ファッション(オシャレ)としての和服」が非常に多いように思える。

自前の地盤なんざ作ろうともせず、表面的なことでワイワイやってるだけ。これが和服の現状なんだよ。地盤が存在していない今の和服では、流行の移り変わりとともに「またもや」廃れる危険性が充分にあるんだよ。

それでいいのか?また同じ過ちを繰り返す気なのか?

念を押しておくけど、ファッション的な情報は必要ないと言ってるわけじゃあない。ただ、そういった情報を発信するのであれば、それと同時に、「地盤の整備」も少しずつしていかないと、時代の流れとともにそっくり押し流されちゃうよ?ってことを言いたいわけ。

たとえ「お出かけ」する場所や機会がなくとも、仕事が終わって家にいるとき、休日のんびりするときに着る習慣が少しでもあれば、和服は日常生活の中に残るんだよ。そしてそれが広く浸透していけば、ブームや流行なんぞものともしない、しっかりした「和服の地盤」ができあがるはずだ。

個人の行動が地盤を作っていく(と思う)

じゃあ地盤を作るにはどうすればいいのか?と言われても、こうすれば絶対にいける!ってな方法があるわけじゃあない。そんなもんがあれば、きっと誰かがすでにやってるだろうからね。

ただ、オレが思うには、上で書いたように、今の和服も結局はお出かけ用がメインになってる。この部分をどうにかしないと、いつまでたっても「手を変え品を変え」が続くだけで、地盤の形成まではいかないんじゃないかなと。

とはいえ、業界団体とかがいろいろ企画してやったところで、全部裏目に出ると思う。これは、業界団体を悪く言ってるんじゃなくて、どこをどうやっても企画=イベントという枠から出られないので、「イベントだから着てる」と言われればそれまで。たとえ本人はそのつもりじゃなくても、着物屋だから和服を着てて当たり前、と思われるのと同じかな。

なので、ここはもう「個人(一般の着る人)」がどうにかするしかないんじゃないかなと。これはなにも、業界団体に代わって個人がいろいろ企画するって意味ではなく、和服を気に入って着ている人にしかできないことをするって意味。

そう「無理のない範囲で常日頃から着る」んだよ。ひとりひとりが「歩く広告塔」になるんだよ。

そんなの簡単じゃん、と思うかもしれないけど、「常日頃から」をクリアできる人は意外と少ないと思うよ?

広告塔がショボくちゃ意味がない。

まずは、着る人自身が和服を着慣れることが必要。これは、このサイトで繰り返し書いている、とにかく何度も着ないことには着慣れない(着こなせない)ってやつ。広告塔が和服がサマになってないようでは意味がないでしょ?心配せずとも、体型なんざ関係ないからね。

それと、同じような恰好をしてても、「和服でお出かけします!」と意気込んでる人と、いつも着ているのでたんに「お出かけします」な人では、ちょっとした動きや雰囲気でなんとなくわかるんだよ、ああこの人着慣れてないんだな、ああこの人すごく着慣れてる、って。

詳しい説明は別の記事(詳細)にまかせるとして、いかにもヤラセ的な広告塔ではなく、ごく自然に存在する広告塔のほうが、宣伝効果は高いだろうよ。

日常的な状況でさらっと着る。

恰好がどうであろうと本人がどう考えていようと、お出かけはお出かけ。デパートや催し物会場、ちょっとした鮨屋(回らないところ)で着ていても、お出かけだから和服を着ているんだな、と思われても仕方がない。

でもこれが、近所のスーパーや商店街、寿司屋(回るところ)だったらどうだろう?もっと言えば、犬の散歩だとかゴミ出しとか、日課のような状況。そりゃ中にはガッツリオシャレしてくる人もいるかもしれないけど、そんな「日常」にはそうそういないだろうよ。

そこに和服姿で登場するんだよ。日常なんだからテキトーな恰好で、さらっと(意味不明)着てるだけでOK。「日常で和服もアリ」とアピールするにはもってこいじゃないかな。

「お気に入りの服装」を後世へ

もちろんこれらは、無理してする必要はない。各自が出来る範囲でやってみるだけで充分。

おまけに、急に周囲に和服を着る人が増えるわけでもないし、なんの反応もないのが当たり前。でも、ひとりひとりの行動は微々たるものだけど、それが「広域化」して「継続」されていけば、少しずつ土台は作られていくんじゃないかな。

ちなみに、和服を着る人こそ未だいないけど、オレの知り合いやよく顔を出す飲み屋とかでは、和服の存在が「日常的なもの」になってるからね。

ぶっちゃけ、オレ個人の好みではあるんだけど、和服って、世界に誇れる日本独自(まあ大元は大昔の中国大陸だろうけど)の素晴らしい衣服であり、それを廃れさせるのはホントもったいないと思うわけ。

一時的なブームや通好みの服装なんてセコイ商売の道具としてではなく、たとえ着なくとも、昔から日本人の身近にある服飾文化として根付いてほしい、いや、正確には「思い出してほしい」かな。

正直、業界団体やその周辺には、なにも期待してないんだよ。いろんな「しがらみ」があるだろうから、そういったしがらみのない個人が、できる範囲で少しずつやっていくしかないかなと。

そうなれば、オレを含めたみんなのお気に入りの服装は、きっと後世へと受け継がれていくと思うよ。廃れさせず継承していこうや、日本の文化ってやつをさ。

Last 2015/10/31. Copyright (C) since 2007 バカガエル.