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襦袢はなんのために使うのか?

着物を着るときにはかなりの高確率で併用する襦袢。洋服に当てはめると微妙な位置づけになるコイツの役目は、そもそもいったい何なのだろうか?オレなりに推測してみた。

汗から長着をガードするのが襦袢の役目?

実際に自分が襦袢を使っていて、実用的な面はなんだろうなーと考えてみると、「重ね着による防寒」「肌が直接長着(着モノの正式名称)に触れるのを防ぎ、すべりをよくする」「肌が直接長着に触れるのを防ぎ、長着を汗(皮脂)汚れから守る」ぐらいだろうか。

防寒はなんとなく思いついても「すべりをよくする」「汚れから守る」というのは、いまいちピンとこない人がいるだろう。理屈はこうだ。

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長着の下にはなにがしかを着るわけだけど、襦袢(この場合長襦袢)を使えば、ほとんどが襦袢にガードされ、肌が長着に触れるのは裾や手首の一部分だけになる。しかし下着肌着のみだと、汗をかきやすい襟、胸元をはじめ、手足の大部分が長着に触れることになる。

汗や皮脂が長着につきにくい→汗汚れから長着を守る→その汗で長着が手足にからみつき動きにくくなるのを防ぐ→長着のすべりがよくなる、というわけ。まあ簡単に言えば、防寒目的もある着物の長袖肌着?といった感じかなあ。

それ以外には、これといって役目は思いつかないんだけど……。ちなみに、オシャレがどうこうってのはとりあえず置いといてね。そんなのはホントどーでもいいから(後述)。

高価な長着専用の肌着?

では実際に襦袢はどう使われているのか、時代考証がされているであろう時代劇で男性が着物を着ている様子を、登場人物別?に比較してみよう。

勧善懲悪モノでは結託しやすい○○屋の主人や役職のある武士などは、胸元に半衿が見えることが多いので、おそらく超高確率で襦袢を着ているはず。そして、彼らがどういった長着を着ているかというと、結構お金のかかってそうなものを着ている。

一方、長屋に住んでいるような一般の町人は、長着の下になにも着ていない、あるいは「ドンブリ」のような肌着らしきものしか着ておらず、襦袢を着ている確率はかなり低い。着ている長着は木綿生地でよくある縦縞、あるいはツギハギがあるものなどがほとんどだ。

ちょっと単純すぎるけど以上のことから、お金を持っている人≒高価な長着を着ている人ほど襦袢を使っている頻度が高いことになる。これに、先ほどの「着物専用の肌着ではないのか?」を加味すると、こんな推測が成り立つわけ。

武士や商人は、仕事がら礼装や見映えのお洒落として高価な長着を着ることが多い。しかし、いくら金があるからとはいえ、汗汚れでしょっちゅう洗濯していたのではたまらないので、襦袢を着ることによって極力汚れないようにしていたのではないだろうか?

町人はというと、単純にお金がなかったのもあるけど、そんなに高価な長着を着ているわけではないので、汚れたらテキトーに洗濯すりゃいいし、ほころんだらテキトーに繕えばよかった、だから、わざわざ襦袢を着る必要がなかったのではないだろうか?

もちろん、季節的なこともあるだろうし、なんのかんのいっても所詮は「劇中」なので、確かなことはわからないけど、

まとめると、あまり汚したくないし洗濯もしたくない、いわば一張羅のような長着を着る時に「のみ」併用されていた、専用肌着かもしれないんだよ。

最初は半襦袢しかなく、長襦袢はお洒落用?

ところで襦袢(じゅばん)という名称、ポルトガル語で肌着?を指す「ジバン」という言葉が語源になっているらしい(それまでなんと呼ばれてたかは知らん)。また、江戸時代最初ごろまでは半襦袢やドンブリがメインで、長襦袢が一般的に普及したのはさらにその後らしい。

参考文献によると、長襦袢は遊女(吉原など遊郭のおねえちゃん)が発案者で、部屋着としての使い方が主だったらしい。時代劇でも遊郭ウヒヒシーン(おい)のあと、男が遊女の長襦袢を羽織っているシーンがいくつかあったからね。

オレの推測だけど、頻繁に遊郭へ通えた金持ち連中が、お洒落の一環として遊女の長襦袢をマネするようになったのが男物長襦袢のはじまりで、それが「目に見えないところにこだわる」人らに大ヒットとなり、一気に広まったんじゃないかな?

だから今でも「キモノのイキなオシャレは、長襦袢の生地(=目に見えないところ)がどーたらこーたら」といったことが言われるかもしれない。

おまけとして、褌の一種である越中褌も、遊女が恋しい客に送った袂(たもと)?を、その客が肌身離さず身につけるために考え出したという説もあるらしい。遊郭、恐るべし!

だから「着物に襦袢は必須」にはならない。

以上のことから、襦袢(長襦袢)は、一張羅専用の肌着やお金持ちのお洒落肌着として使われていた可能性が非常に高い。だとすると最後に疑問が残る。なぜ現在では、どんな長着を着る時にも襦袢が必須のように言われている思われているのか?

今までのことを一文にまとめるとこうなる。

「「高価な」長着を着る時「や隠れたお洒落」には(長)襦袢を使う「のもアリ」」

この中から、「高価な」「や隠れたお洒落」「のもアリ」の部分が適当に解釈、あるいは抜け落ちてしまって、

「長着を着る時には(長)襦袢を使う」

となってしまったんじゃないかな?そしてこれが着物の一般常識っぽく広まっていったか、あるいは……どこかのポンコツ着物屋どもが「ねつ造」したのかもしれない。もっとも、江戸時代の身分制度がなくなって着るものにも制限がなくなり、誰でも自由な服装をしてもよくなったのも原因だろうけどね。

ただ「高価な〜のもアリ」の考え方でいくのなら、必ずしも襦袢は使わなくていいことになる。

最初から洗濯することを前提にした長着を着る場合や、襦袢の代わりをするなにか(解説)を使う場合だ。一張羅をめかしこんで着ることしかない人には用事はないかもしれないけど、日常生活の中で着物を着るのなら、襦袢を使うかどうか、考える余地は充分あるだろうな。

<参考文献>
「大江戸復元図鑑<庶民編>」 笹間良彦 著
「江戸Tokyoストリートファッション」 遠藤雅弘 著
「ウィキペディアwikipeia〜襦袢」

Last 2008/06/11. Copyright (C) since 2007 バカガエル.