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トップページ>洋服にはない和服の長所

和服にも長所はたくさんある。

機動性に関しては和服は洋服に勝てないのだが、機能的には洋服より優れている点(長所)がたくさんある。

構造上の洋服との違い

洋服と和服の構造的な違いは、主に以下の2点が挙げられる。

ボタンやファスナーがない。

角袖など一部の装備を除いて、和服には基本的にボタンやファスナーがなく、言い換えれば「定位置が存在しない」ということだ。捉え方としては、ファスナーのついたカバン(洋服)と風呂敷(和服)をイメージしてみてほしい。

カバンは大きさが決まっているので、内容量(入れるモノ)が少なければスカスカだし、お土産などちょっとでもオーバーすればパンパンor入らなくなる。いっぽう風呂敷は、内容量によって自由に形を変えられるので、包むモノの大きさや量によって、結び目を調節してやればいい。

確かに風呂敷にもだいたいの容量はあるが、カバンほど窮屈なものではなく、モノを人間に置き換えてやれば、和服は風呂敷と同じ原理で着られる衣服なのだ。

余分な生地を捨てずに、残して縫い込んである。

これは和服全般というより着物の仕立て方で、原理は上で書いたカバンと風呂敷の違いなのだが、少しわかりづらいので別の例にしてみよう。

「10センチ四方の紙がある。これを10×8センチにするにはどうすればいいか?」

普通に考えると「2センチ切ればいいじゃん」だが、もうひとつの方法として、「2センチのところで折り返し二重にする」のもある。切ってしまったら、テープでも使わないかぎり元には戻らないが、折り返しているのなら、折り返しを戻せば元の紙に戻る。

これと同じで、洋服の仕立て方は、いらない部分を「切って捨てて」縫い合わているが、着物は基本的にいらない部分を「折り返して残して」縫い合わせているのだ(和服全般になると、作務衣や温泉浴衣など、切って縫い合わせているものもある)。

よって、折り返して残してある部分を引っ張り出して(その逆も可)縫い合わせてやれば、別サイズのものを仕立てることが可能であり、もちろん限度はあるが、着物は最初からサイズ変更を前提にした仕立て方をしているわけだ。

実用上の着物の長所

では実際に和服を着るとき、実用上どういった利点があるのか例を挙げてみよう。

体型の変化にある程度対応する。

これは「ボタンやファスナーがない」に起因することで、着物は着丈(身長)の変化がなければ、少々の横幅の変化には買い換える必要がない。

最近太ったかなあ?といったときによくある「ズボンやシャツが着られなくなった」も、ウエストプラスマイナス10センチ?の範囲内ならば多分大丈夫(推測)。痩せたほうに関しては、テクニック(解説)を使えば着ることができるし、帯は微調整可能なので、ベルトの穴がない、などということも起きない。作務衣や甚平は、ズボンはある程度仕方ないが、上着に関しては紐で調節できるしね。

太りすぎあるいは痩せすぎなど、極端な体型差がある場合をのぞけば、身長が同じなら他人のものもほぼ着ることができるわけであり、これが古着を買うことができる最大の要因なのだ。

仕立て直し(サイズ変更)が可能

これは「残して縫い込んである」のがポイントで、着物は代々着ることができる、というのも、これが元になっている。

縫い込み(折り返し部分)がどれぐらいあるかで、伸ばせる寸法は変わってくるが、背が低いなど逆に縮めるほうはどうにでもなる(解説)スーツだとほとんど一代限りのものだが、着物は父ちゃん爺ちゃんのものを、かなりの確率で引き継ぐことができるのだ。

また、メシを食えば食っただけ、スーパーマリオのようにどんどんでかくなる育ち盛りの子供でも、着物なら仕立て直すことによって、かなり調節することが可能。私も詳細は知らないが、時代劇の子役が着ている着物にある「肩あげ(=裄の調節)」がその証拠だ。

締め付け感が少ない。

ボタンやファスナーもないし、和服を固定するのは帯か腰紐程度、よって、帯を締める腰の部分以外は、体を締め付ける部分がない。袖口や首回りも自由なので、洋服のボタン止めのような圧迫感を感じることもないだろう。

また、先ほど書いたように、帯の締め方(強さ)で緩急はどうにでもなるし、ゆったりしたほうがいいなら兵児帯だってあるし、どんな体型にでも微調整がきく。ベルトの締め方がデジタルなら、帯の締め方はアナログのようなものか。

腕が太いから袖が通らない格闘技系や、太ももが太いからズボンが履けない競輪選手も、和服ならさほどそれらを気にする必要はない。着物であれば上下一体型なので、ズボンのように股の位置(股上の長さ)を心配する必要もない。

洋服との吸収合併

洋装の上に和服を重ねることは充分可能だ。和服の上にジャケットは着られないが、夏目漱石の小説に出てくる某教師や、るろうに剣心に出てくる某キャラなどのように、シャツの上から和服を着ることはできる(解説)

スーツに足袋雪駄はおかしいけれど、和服+足袋&ボーリング用シューズはOK(実験済み)。当然長靴もセーフ、着物の下にズボンもセーフ、帯をするのがめんどくさいのなら、仮面ライダーの変身ベルトもアリ……とまでは言わないけどね。

意外と温かい。

和服は前の部分を重ねて着用するため、お腹部分は自動的に二枚重ねの状態になるし、着物に限れば胸から下がすべてその状態になる。

夏場はこれが困ったちゃんなのだが、冬場になればその逆。着物だと上下一体型なので、背中も出ないし見た目以上に温かい。

和服、特に着物の短所「機動性のなさ」

いろいろ長所を挙げてはみたのだが、和服、特に着物では洋服に絶対勝てない要素が、冒頭にも書いた「動きやすさ、活動しやすさ=機動性」だ。

目の前を泥棒が逃げていったとして、「ま〜て〜ルパ〜ン!!」と銭形警部よろしく追っかける時、着物と洋服では、結果は目に見えているだろう。「身軽で動きやすい格好」が求められる状況では、どんなにがんばってもダメで、唯一対抗できるとしたら、作務衣や甚平しかない。

たすきがけをしたり、裾をはしょってやればいいじゃないか!という意見が聞こえてきそうだが、そんなことしてもムダで、どうしても実験してみたいなら、そのスタイルでサッカーやバスケをやってみればいい。プレイ自体は可能だろうが、スポーツウェアを着ているように機敏に動き回れるかどうか……。

ちなみに私のような現場作業員では、どんなに和服で仕事をしたくても絶対にできない。生地の隙間など、洋服に比べてゆったりとしている和服の構造や着方は、服がなにかに引っかかる可能性があり、一歩間違えば命にかかわる危険性があるからだ。

実際、和服を着て大きな工事現場へ行った場合、よほどの偉いサン(例えば施主の視察とか)でもないかぎり、絶対に現場内へは入れてくれないし、へたをすれば偉いサンでも、着替えないと入れてくれないかもしれないからな(本当)。

短所をカバーする「くつろぎ」、そして……

結局のところ、機動性が重視される場面では洋服、それ以外なら和服、といった感じで、適材適所うまく使い分ければいいのだ。ちなみに、自転車は着物だとちょっとツライが、ママチャリでもマウンテンバイクでも充分乗れる(実験済み)。無理はしなくていいけどね。

私の考えだが、先ほど挙げたように洋服のような締め付け感もないし、和服は精神的にも身体的にも、かなりリラックスして着ることができる衣服ではないかなと思う。

現代ではいろいろな意味を含めて、ちょっと大げさだが、和服の構造自体が「くつろぎ」を演出するのではないだろうか。くつろぎを謳う一流のシティーホテルでも寝巻き浴衣セットを置いていたりするし、バスローブやガウンも、袂(たもと)こそないものの着物と同じような構造をしているからな。

あっ、そうそう、もう一つだけ長所?がある。堂々としていれば違う職業に間違われるぞ(おい)

Last 2009/02/03. Copyright (C) since 2007 バカガエル.